ヒト

腸内デザインで
病気ゼロの幸せな世界を。

株式会社メタジェン 代表取締役社長CEO

福田 真嗣

フクダ シンジ
SCROLL

腸内細菌を含む腸内環境を網羅的に解析し評価する独自の技術「メタボロゲノミクス®」を駆使し、腸内環境を適切にコントロールする「腸内デザイン」で病気ゼロ社会の実現を目指す「株式会社メタジェン」。代表取締役社長 CEOとして会社を率いる福田真嗣に、会社立ち上げまでの経緯、事業にかける想いについて聞いた。

「小学校高学年の頃に両親に買ってもらった顕微鏡を使って、自分で採取した植物の葉っぱや虫などを観察するのが好きでした」

子どもの頃から理科系科目が好きだったという福田。進路を決めるきっかけになったのは、現代に恐竜が蘇るSF小説『ジュラシック・パーク』だ。作中の、琥珀に閉じ込められた吸血系の虫から恐竜の血液を取り出して恐竜を蘇らせる技術に魅せられ、バイオテクノロジーを学びたいと農学部に進んだ。しかし、大学1年生のときに受講したある科目がきっかけで、微生物学の道へと進むことになる。

「学部1年生が受けられる講義の中に、「生化学」という専門科目があって受講していたんですが、内容が難しくて毎回先生のところに質問に行っていたんです。そうしたら『研究やってみるか?』と声をかけてくれて、呼ばれた先が微生物の研究室でした。その向かいには、学びたいと思っていたバイオテクノロジーの研究室がありましたが、微生物の研究を始めてみるとおもしろくなってきて、そのまま微生物の研究室に入りました」

人類のためのサイエンス

博士課程修了までの9年間を大学で過ごした福田は、自らを「異分野融合型研究者」と呼ぶ。

「私はこれまで、自分の専門分野と半分くらい重なるような研究分野に常に挑み続けてきました。少し飽きっぽいとも言えるんですが、新しいことへの探究心が人一倍強いんです。また、指導教官の影響もあったのかもしれませんが、大学で学び始めた頃から、基礎研究の成果に加えて、その成果がどのように社会実装されていくかということにも興味がありました。『この成果をどういうかたちで社会に実装すれば、人々の役に立つものになるだろうか』ということを意識しながら研究に取り組んできましたね」。その「異分野融合」と「実学」マインドで腸内細菌と人間との関係性に着目し、メタジェンの理念である「最先端科学で病気ゼロを実現する」という可能性を見出したのも、その頃だという。

その後、腸管免疫の研究で著名な理化学研究所の大野博司氏に師事し、可能性の手応えを確かめるように福田は研究を進めた。そして、研究を進めれば進めるほど、成果を社会に還元したいという想いは強くなっていったという。そんな福田を次なるステージへと導いてくれたのは、慶應義塾大学先端生命科学研究所の所長、冨田勝氏だった。

「2011年頃に、学会で声をかけてくださったんです。研究の中でメタボローム解析に取り組んでいたこともあり、慶大先端研のことは知っていましたが、その頃はHMTやSpiberなど慶大先端研からスピンアウトしたベンチャーも盛り上がっていた頃でした。新しいものが生まれる風土に魅せられ、鶴岡でなら研究を進めながら実用化にも取り組み、思い描いていた未来が実現できるのではないかと思いました」

ブレイクスルーの鍵は異分野融合にあり

慶應義塾大学先端生命科学研究所の特任准教授就任をきっかけに、鶴岡市に移り住んだのが2012年の6月。そこから3年を待たずに、2015年3月に福田は株式会社メタジェンを立ち上げる。「研究」と「実用化」の両輪で「最先端科学で病気ゼロを実現する」ことを目指しているが、社内で腸内細菌研究のスペシャリストは福田含め3名のみ。そこには、どんな戦略があるのだろうか。

「腸内細菌研究分野は、まだまだわからないことだらけの新しい研究分野です。そんな未開の地を切り拓いていくためには、やはり既存の枠組みを飛び越えるブレイクスルーが必要だと思うんです。腸内細菌のスペシャリストだけではなく、いろいろな研究分野のスペシャリストを集めているのはそのためなんですよね」

目標実現のため、さまざまな研究分野の知見を融合する。その戦略が実行されているのは、研究においてだけではない。もう一方の車輪「実用化」においても、多くの連携が生まれている。その代表的な取り組みが、2016年に発足した「腸内デザイン応援プロジェクト」。病気ゼロ社会の実現に向けて各企業のノウハウを集結する研究開発プラットフォームだ。

「一人ひとりの腸内環境パターンに合わせた食事やサプリメントを提案することで、腸内環境を改善する。そんなサービスの提供を見据えて組織しました。2018年度は22の企業に参画していただいており、これまでに、森下仁丹やサン・クロレラ、キューサイなどと共同研究にも取り組んできました」

病気ゼロ社会を、ここ鶴岡から

市民として6年、経営者として3年以上を過ごしてきた鶴岡市。このまちは今、福田にとってどのような場所になっているのだろう。

「会社を立ち上げここまで続けてくることができたのは、鶴岡の行政や金融機関をはじめ、たくさんの地域の方々の支えのおかげであり、本当に感謝しています。そういった経緯もあり、鶴岡で起業したからには『鶴岡から病気ゼロ社会を』という気持ちが強いですね。これまでに2回、鶴岡市内で小学生向けの腸内細菌実験教室を開催し、その中でオリジナルのボードゲームを使った腸内細菌に関する知識の普及も行ってきました。子どもたちの健康に対する意識を早いうちから育むことが、この先の病気ゼロ社会にも結びつくと考えています。今後も地域の方々と連携した取り組みを考えていきたいですね。また、私たちを含め複数のベンチャーがあるサイエンスパーク内の横のつながりも大事だと感じています。得意なことを発揮し合って連携することで鶴岡を盛り上げていけると思いますし、そういう場だからこそ、独自のアイデアを持つチャレンジングな人材が自然に集まってくる。今後もつながりを活かし、ますます発展する場所にしたいと思っています」

鶴岡を病気ゼロの先進地に、そして世界中を長寿ハピネスな社会に。福田の挑戦は、まだ始まったばかりだ。

株式会社メタジェン 代表取締役社長CEO
福田 真嗣 フクダ シンジ

1977年茨城県生まれ。2006年、明治大学大学院農学研究科博士課程を卒業後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、2012年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授。2015年より科学技術振興機構さきがけ研究者、2016年より筑波大学医学医療系客員教授、2017年より神奈川県産業技術総合研究所グループリーダーを兼任。2013年文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。2015年文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術への顕著な貢献2015」に選定。同年、ビジネスプラン「便から生み出す健康社会」で第1回バイオサイエンスグランプリにて最優秀賞を受賞し、株式会社メタジェンを設立。同年、株式会社メタジェン代表取締役社長CEOに就任。専門は腸内環境制御学、統合オミクス科学。

株式会社メタジェン

体内におけるもう1つの臓器として近年注目されている「腸内フローラ」の適切なコントロールによる「病気ゼロ社会」の実現を目指した、2015年創業の慶應義塾大学&東京工業大学発の研究開発型ジョイント・ベンチャー。